派遣・請負・準委任の違い[IT屋さんの契約形態]
1. 契約形態
2. 業務委託契約書
3. 工程毎に適した契約
4. IT派遣屋を開業するには
5. 参考文献
1. 契約形態
契約形態は基本的に「派遣、請負、準委任」の3種類になります。
※SES(システムエンジニアリングサービス)やT&M(タイムアンドマテリアル)は準委任に含まれます。
派遣 | 請負 | 準委任 | |
---|---|---|---|
契約内容 | 労働に従事 | 仕事の完成 | 業務の委託 |
指揮命令 | 発注側(派遣先) | 受注側 | 受注側 |
責任 | なし | 瑕疵担保責任 | 善管注意義務 |
報酬支払い | 一定期間毎 | 仕事の完成後 | 一定期間毎 |
収入印紙 | なし | 必要(2号文書) | なし |
法律 | 労働者派遣法 | 民法 | 民法 |
偽装請負 - IT屋さんのよくある慣習
請負または準委任契約で発注元に常駐する案件で、発注元から指揮命令がある場合は偽造請負となります。指揮命令が許されるのは派遣契約のみです。
瑕疵担保責任 - かしたんぽせきにん
検収時点では判明しなかった瑕疵(欠点や欠陥)がある場合には受注者が責任を持って修理、修復する責任がある。瑕疵担保責任の期間は納入後から1年間。
善管注意義務 - ぜんかんちゅういぎむ
委任・準委任契約において、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務です。要するに「手抜き」や「ミス」をしないようにする義務となります。
委任と準委任の違い
委任は弁護士に事件を依頼するなどの法律行為の事務の委託。法律行為以外の委託は準委任となります。
2. 業務委託契約書
業務委託契約書は「請負」または「準委任」(委任)の契約書となります。タイトルだけでは判別できないので契約書の内容をよく確認する必要があります。
※この業務委託契約書はサンプルです。
3. 工程毎に適した契約
経済産業省が策定した工程毎に適した契約の一覧表です。
工程 | 契約 | |
---|---|---|
企画・要件定義 | システム化の方向性 | 準委任 |
システム化計画 | 準委任 | |
要件定義 | 準委任 | |
開発 | 外部設計 | 準委任 or 請負 |
内部設計 | 請負 | |
プログラミング | 請負 | |
単体テスト | 請負 | |
結合テスト | 請負 | |
総合テスト | 準委任 or 請負 | |
受入・導入支援 | 準委任 | |
運用 | 運用テスト | 準委任 |
運用 | 準委任 or 請負 | |
保守 | 保守 | 準委任 or 請負 |
経済産業省の「情報システム信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」の「モデル契約におけるフェーズの分類と契約類型」から抜粋しています。
4. IT派遣屋を開業するには
今までは特定派遣で届出をするだけで誰でも開業可能でした。
2015年9月30日施行の改正派遣法では「一般派遣、特定派遣」の区別が廃止されて、すべての労働者派遣事業は、新たな許可基準に基づく許可制となりました。更新は初回は3年、2回目以降は5年毎です。
新たな許可基準は次の通りです。(常時11名以上の場合)
現預金額 | 1,500万円 x 事業所数 |
---|---|
基準資産額 | 2,000 万円 x 事業所数 |
事業所の面積 | 20㎡以上(6坪/12畳以上) |
今までは届出のみで済まされていた派遣事業が、現預金、基準資産額と事業所の面積が必要となりました。
※10人以下の小規模派遣元事業主の暫定的な配慮措置は平成27年労働者派遣法の改正について(厚生労働省)をご覧ください。(現預金、基準資産額が減額)
よくある零細企業の派遣屋の例
取締役1名、社員11名の小規模な零細企業のケースで簡単に計算。
零細企業なので人売りの単価は月50万円とします。そのうち70%は社員の給料で残りの30%はピンハネで会社の収入となります。役員報酬は年間1200万円。事務所等の経費は年間600万円とします。
次の表に1年間の純利益を算出してみました。(かなりテキトー)
項目 | 金額 |
---|---|
売上高 | 6600万円 |
役員報酬(1人) | -1200万円 |
社員給与(11人) | -4620万円 |
その他(事務所等) | -600万円 |
営業利益 | 180万円 |
法人税等(21%) | -38万円 |
当期純利益 | 142万円 |
1年間の純利益が142万円にしかなりませんでした。
2015年9月以前ならばこのレベルでも、緊急時には借金などでなんとかなっていたかと思いますが、改正派遣法が施行された現在は「新たな許可基準」の審査を通すのが厳しい状態となります。
単価を上げたり、経費削減など代表取締役の腕の見せ所かもしれません。
5. 参考文献
労働者派遣法
民法 請負(第632条~第642条)
民法 委任(第643条~第656条)
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