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派遣・請負・準委任の違い[IT屋さんの契約形態]

1. 契約形態
2. 業務委託契約書
3. 工程毎に適した契約
4. IT派遣屋を開業するには
5. 参考文献

1. 契約形態

契約形態は基本的に「派遣、請負、準委任」の3種類になります。
※SES(システムエンジニアリングサービス)やT&M(タイムアンドマテリアル)は準委任に含まれます。

派遣請負準委任
契約内容労働に従事仕事の完成業務の委託
指揮命令発注側(派遣先)受注側受注側
責任なし瑕疵担保責任善管注意義務
報酬支払い一定期間毎仕事の完成後一定期間毎
収入印紙なし必要(2号文書)なし
法律労働者派遣法民法民法

偽装請負 - IT屋さんのよくある慣習

請負または準委任契約で発注元に常駐する案件で、発注元から指揮命令がある場合は偽造請負となります。指揮命令が許されるのは派遣契約のみです。

偽装請負の場合は発注元に常駐している社員が発注元へ直接雇用される「労働契約申込みみなし制度」が2015年9月30日に施行されています。詳しくは「派遣元事業主・派遣先の皆様」(厚生労働省)をご覧ください。

瑕疵担保責任 - かしたんぽせきにん

検収時点では判明しなかった瑕疵(欠点や欠陥)がある場合には受注者が責任を持って修理、修復する責任がある。瑕疵担保責任の期間は納入後から1年間。

善管注意義務 - ぜんかんちゅういぎむ

委任・準委任契約において、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務です。要するに「手抜き」や「ミス」をしないようにする義務となります。

委任と準委任の違い

委任は弁護士に事件を依頼するなどの法律行為の事務の委託。法律行為以外の委託は準委任となります。

2. 業務委託契約書

業務委託契約書は「請負」または「準委任」(委任)の契約書となります。タイトルだけでは判別できないので契約書の内容をよく確認する必要があります。

※この業務委託契約書はサンプルです。

3. 工程毎に適した契約

経済産業省が策定した工程毎に適した契約の一覧表です。

工程契約
企画・要件定義システム化の方向性準委任
システム化計画準委任
要件定義準委任
開発外部設計準委任 or 請負
内部設計請負
プログラミング請負
単体テスト請負
結合テスト請負
総合テスト準委任 or 請負
受入・導入支援 準委任
運用運用テスト準委任
運用準委任 or 請負
保守保守準委任 or 請負

経済産業省の「情報システム信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」の「モデル契約におけるフェーズの分類と契約類型」から抜粋しています。

4. IT派遣屋を開業するには

今までは特定派遣で届出をするだけで誰でも開業可能でした。

2015年9月30日施行の改正派遣法では「一般派遣、特定派遣」の区別が廃止されて、すべての労働者派遣事業は、新たな許可基準に基づく許可制となりました。更新は初回は3年、2回目以降は5年毎です。

新たな許可基準は次の通りです。(常時11名以上の場合)

現預金額1,500万円 x 事業所数
基準資産額 2,000 万円 x 事業所数
事業所の面積20㎡以上(6坪/12畳以上)

今までは届出のみで済まされていた派遣事業が、現預金、基準資産額と事業所の面積が必要となりました。

※10人以下の小規模派遣元事業主の暫定的な配慮措置は平成27年労働者派遣法の改正について(厚生労働省)をご覧ください。(現預金、基準資産額が減額)

よくある零細企業の派遣屋の例

取締役1名、社員11名の小規模な零細企業のケースで簡単に計算。

零細企業なので人売りの単価は月50万円とします。そのうち70%は社員の給料で残りの30%はピンハネで会社の収入となります。役員報酬は年間1200万円。事務所等の経費は年間600万円とします。

次の表に1年間の純利益を算出してみました。(かなりテキトー)

項目金額
売上高6600万円
役員報酬(1人)-1200万円
社員給与(11人)-4620万円
その他(事務所等)-600万円
営業利益180万円
法人税等(21%) -38万円
当期純利益142万円

1年間の純利益が142万円にしかなりませんでした。

2015年9月以前ならばこのレベルでも、緊急時には借金などでなんとかなっていたかと思いますが、改正派遣法が施行された現在は「新たな許可基準」の審査を通すのが厳しい状態となります。

単価を上げたり、経費削減など代表取締役の腕の見せ所かもしれません。

5. 参考文献

労働者派遣法
民法 請負(第632条~第642条)
民法 委任(第643条~第656条)





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公開日:2016年08月26日 最終更新日:2016年08月27日
記事NO:02129